・はじめに
海水浴やキャンプや釣りや登山の途中で海岸、河原、渓流、山中で石や鉱物また土砂などを採取・拾ってくる人たちは多いですよね。
どんな場所の石や鉱物や砂などを採取、拾ってきてはいいとは限りません。天然記念物もあります。
海岸や河川は国や県のもので、国土交通省や県の土木課などで管理されて海岸法、河川法という法律で管理されています。
また、多くの観光地としている山や海などの自然公園(国立公園・県立公園など)には自然公園法という法律があり、やはり国や県で管理されています。
この3つの法律により、海岸や河川や山などの自然公園内の保全や環境保護が守られています。
もちろん石や土砂などの採取にも制限がかかっています。
・海岸法については下記の条例が掲げてあります。
第八条 海岸保全区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りでない。
一 土石(砂を含む。以下同じ。)を採取すること。
二 水面又は公共海岸の土地以外の土地において、他の施設等を新設し、又は改築すること。
三 土地の掘削、盛土、切土その他政令で定める行為をすること。
2 前条第二項の規定は、前項の許可について準用する。
引用:国土交通省・海岸法
基本は海岸の石や砂等の採取は禁止されています。
実際に国土交通省にまで直接聞いてみた方のブログがありました。
わたし、国土交通省に直に電話で聞いていました。
以下、FBからの引用
結果から申しますと、
個人がちょっと貝殻や砂を持って帰っても基本は問題ありません。貝殻とか拾って何か作って売っても問題ありません。
海岸法により、穴を掘るとか、伐採するとか、また大量に土砂を持っていく行為は違法になります。
との事でした。
もちろんシーグラスや流木なども問題ありません。
ただし、細かくは条令により違うので各地方自治体に問い合わせてね、という事でした。
引用:貝殻拾いが違法? | 初心者の初心者による、今更聞けないアクセの作り方~ほぼ実験日記
個人的な見解では、
実際には、海岸で石拾いをして個人の自由使用の範囲で、環境破壊や環境保護の面で影響がないレベルで大量に採取したりしなければ、少量拾ってくるぐらいは問題ないとは思います。
・河川法については下記の条例が掲げてあります。
河川法の第26条
(土地の掘削等の許可) 第27条 河川区域内の土地において土地の掘削、盛土若しくは切土その他土地の形状を 変更する行為(前条第1項の許可に係る行為のためにするものを除く )又は竹木の 。 栽植若しくは伐採をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管 理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽易な行為については、 この限りでない
引用:国土交通省・河川法
基本は河川の石や川砂などの採取は禁止です。
ただし、政令で定める軽易な行為については、 この限りでないという条文が記載されています。
国土交通省によれば自由使用という内容で記載があります。
○ 自由使用(一般使用・普通使用)
何人も、他人の使用を妨げない限度において、いつでも自由に使用することができる。
(例)散策、遊泳、水遊び、魚釣り、石ひろい
自由使用は、何らの手続きなしに行うことができる反面、使用者に何らの権利が生ずるものではない。
引用:河川法
このことから、鉱物や土砂の採取も個人で数個ほど持ち帰る位は問題がないことがわかります。
・自然公園法と自然環境保全地域については下記の条例が掲げてあります。
第十三条
3 特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、当該特別地域が指定され、若しくはその区域が拡張された際既に着手していた行為(第五号に掲げる行為を除く。)若しくは同号に規定する湖沼若しくは湿原が指定された際既に着手していた同号に掲げる行為若しくは第七号に規定する物が指定された際既に着手していた同号に掲げる行為又は非常災害のために必要な応急措置として行う行為は、この限りでない。
一 工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
二 木竹を伐採すること。
三 鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。
四 河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
五 環境大臣が指定する湖沼又は湿原及びこれらの周辺一キロメートルの区域内において当該湖沼若しくは湿原又はこれらに流水が流入する水域若しくは水路に汚水又は廃水を排水設備を設けて排出すること。
六 広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。
七 屋外において土石その他の環境大臣が指定する物を集積し、又は貯蔵すること。
八 水面を埋め立て、又は干拓すること。
九 土地を開墾しその他土地の形状を変更すること。
十 高山植物その他の植物で環境大臣が指定するものを採取し、又は損傷すること。
十一 山岳に生息する動物その他の動物で環境大臣が指定するもの(以下この号において「指定動物」という。)を捕獲し、若しくは殺傷し、又は指定動物の卵を採取し、若しくは損傷すること。
十二 屋根、壁面、塀、橋、鉄塔、送水管その他これらに類するものの色彩を変更すること。
十三 湿原その他これに類する地域のうち環境大臣が指定する区域内へ当該区域ごとに指定する期間内に立ち入ること。
十四 道路、広場、田、畑、牧場及び宅地以外の地域のうち環境大臣が指定する区域内において車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること。
十五 前各号に掲げるもののほか、特別地域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの
引用:自然公園法
自然公園法の場合、重要なポイントは、各自治体によって多少異なることです。
多くの場合は、特別地域なら許可申請、普通地域なら届出申請を管理事務所に提出する必要があります。
以下のように許可(届出)の必要がない行為の事例も存在します。
許可を要しない行為 以下の行為は、許可(届出)を受けないで行うことができます。
行為にあたっては、国立公園の中であることに配慮し、形状及び色彩が周囲の風致又は景観と調和するよう にしてください。
区 分 許可(届出)を要しない行為 工 作 物 の 設 置
○農業用施設のうち、溝、井せき、とい、水車、水槽等を作ること。
○門、生垣の高さが3m以下で、かつ水平投影面積が30 ㎡以下のきん舎等を作ること。
○社寺境内地又は墓地において、鳥居、灯ろう、墓碑等を作ること。
○道路等、公衆が通行し又は集合する場所から20m以上の距離にある炭がま、炭焼小屋、伐木小屋、 造林小屋、畜舎、納屋、肥料だめ等を作ること。
○ひび、えりやな類、漁具干場、漁舎等を新築し、改築し、又は増築すること。
○自然公園法の許可を受けて行う行為に必要な工事用の仮工作物(宿舎を除く。)を作ること。
○港湾法に定める航路標識その他船舶の交通の安全を確保するために必要な施設を改築又は増築する こと。(新築は許可が必要)
○巣箱、給じ台、給水台等を設置すること。 木 竹 の 伐 採 ○宅地内の木竹を伐採すること。
○自家用のために木竹を伐採(塊状択伐を除く。)すること。
○農業用に栽培した木竹を伐採すること。
○枯損した木竹又は危険な木竹を伐採すること。
○森林の保育又は電線路の維持のために下刈り、つる切し、又は間伐すること。
○牧野改良のためにいばら、かん木等を除去すること。
土 石 採 取
○宅地内の土石を採取すること。
○土地の形状を変更するおそれのない範囲内で、鉱物を採取し、又は土石を採取すること。※小石を 拾う程度の行為に限る
広 告 物 等 の 掲 出
○建築物の壁面や工作物等に、地表から2.5m以下の高さで表示すること。
○法令の規定により、又は保安の目的で、広告物に類するのを掲出し、若しくは設置し、又は広告に 類するものを工作物等に表示すること。
○鉄道の駅舎やバスの待合所等において、駅名板、停留所標識、料金表等を掲出し、若しくは設置し、 又は工作物等にこれらを表示すること。
○森林の保護管理又は野生鳥獣の保護増殖のための標識を掲出し、又は設置すること。
物 の 集 積
○1.5m以下の高さで、かつ、10 ㎡以下の面積で物を集積し、又は貯蔵すること。
○耕作の事業に伴う物の集積又は貯蔵で明らかに風致の維持に支障のないもの。
○森林の整備又は木材の生産に伴い発生する根株、伐採木又は枝条を森林内に集積し、又は貯蔵する こと。
○木材の加工又は流通の事業に伴い発生する木屑を集積し、又は貯蔵すること。
全 般 ◆工作物等を修繕するために必要な行為(維持管理行為と判断されるもので、規模、形状・色彩等の 外観に変更が生じないものに限る。)
※上記以外にも、法令に基づく施設等の整備で許可が不要となる行為がありますので、詳しくは許可担当窓口 までご相談ください
引用;自然公園法許可申請の手引き 福島県会津地方振興局 平成23年
対象の自治体の許可担当窓口に問い合わせをしてみるのが安心です。
・自然環境保全地域と自然公園の違い
原生自然環境保全地域、自然環境保全地域や沖合海底自然環境保全地域は、原生の状態を維持している地域や優れた自然環境を維持している地域を、今後も極力人為を加えずに後世に伝えることを目的として指定される地域です。 それに対して、自然公園は、自然風景地の保護とともに自然とのふれあいを図ることを目的として指定される地域であり、歩道やビジターセンターなどが計画的に整備され、快適で適正な利用が推進されています。
引用:環境省HP
個人的な見解としましては、自然環境保全地域では、採集行為をせずに後世の財産になるよう保護に協力したいと考えます。
・森林法について
保安林内の立竹の伐採(立木の損傷、家畜の放牧、下草、落葉又は落枝の採取、土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質の変更)の許可(森林法第34条第2項)
保安林で、家畜の放牧や土石・樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為などを行おうとする場合には、あらかじめ県知事の許可を受けなければならない。
引用:関東森林管理局HP
このように、保安林に区分されている場合採掘には、許可申請が必要になります。
個人的見解としましては、表面採集に限定し少量であるならば、採取を行えると思います。
下記のページにて、自然公園や自然環境保全地域、保安林や民有林、国有林の分布の確認方法をご紹介しておりますので、行動計画の際に使っていただけましたら幸いです。
・法務局や森林管理局にて閲覧
・環境アセスメントデータベース(https://www2.env.go.jp/eiadb/ebidbs/)
・国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステム(https://nlftp.mlit.go.jp/webmapc/mapmain.html#5/36.104611/140.084556/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1)
・天然記念物(文化財保護法)については下記の罰則が掲げてあります。
第107条の2 史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する者が当該史跡名勝天然記念物の所有者であるときは、2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金若しくは科料に処する。
引用:文化財保護法
個人的な見解としましては、自然を愛好するものとして保護を優先すべきと考えるため、天然記念物に関しましては採集対象にしてはいけません。
天然記念物などの文化財の一覧は、各自治体のWEBサイトなどで閲覧できますので
行動計画の段階で事前に調査しておくと安心です。
重要なことは、自然公園や自然環境保全地域の分布を把握し、行動計画の段階で事前に問い合わせをすることです。
【まとめ】無許可での山や川、海での鉱物採集における条例の個人的見解
・個人所有の山などでは、石も含めて全ての採取は違反行為
・自然公園内(海・川・山)では、鉱物や土砂の採取は申請が必要な場合がある
・自然環境保全地域では、採集行為をせずに後世の財産になるよう保護に協力
・保安林に指定されている場合、鉱物や土砂の採取は、表面採取のみ行う
・自然公園区域外河川の石や土砂の持ち帰りは自由使用の常識の範疇で行う
・自然公園区域外海岸の石や土砂の持ち帰りは原則では禁止だが少量であれば問題ない
・国または県指定の天然記念物に該当する鉱物や土砂の採取は、違反行為
追伸
鉱物や土砂の採取に対する見解は、管轄している県などの自治体で対応が様々です。行動計画の段階で、該当する役所(土木課や許可担当窓口など)に問合せしておくのが安心です。
これ以外にもご存じな方がおられましたら、ご連絡いただければ幸いです。より良いコンテンツ作りのため記事をグレードアップして行きます。